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日本語学校からの転換

Yahooニュースを読んで、「入管が仕事してる……」とぼんやり思った休日です。

日本語学校で無資格教員が授業 入管立ち入り

うちの学校ではないのですが、同じ愛知県内だったため驚きました。

こうして実際に取り締まりが行われるのだなと思う一方で、コメント欄を読んでいても、結局、国が日本語教師をどれぐらい必要としているのか、本音はよく分かりません。

そして、もし自分の勤務先でも何らかのトラブルが起き、さらに認定日本語教育機関としての認定も難しくなったらどうなるのだろう、と考えてみました。

ビジネス系への転換はできる?

日本語学校が認定日本語教育機関として認定されなかった場合、たとえばビジネス系の専門課程へ転換し、日本語の授業を一部に組み込む形で、学校を存続させることはできるのでしょうか。

ビジネス日本語などであれば、これまでの経験を生かして対応できる日本語教師もいると思います。もしこうした転換が可能なら、仕事内容は変わるものの、認定されなかったからといって、すぐに全員が職を失うとは限らないのかもしれません。

ただ、専門科目を教えるには別の条件があるため、現在の日本語教師がそのまま担当できるとは限りません。

そもそも、以前から日本語学校に限らず、専門学校の専門課程の一部として日本語の授業を行っている学校もあります。

主な履修科目は別にあり、カリキュラムの一部として日本語の授業を行う場合、現状では認定日本語教育機関と同じ基準が適用されるわけではないはずです。

文部科学省・出入国在留管理庁「『専ら日本語教育を受けようとする場合』の判断基準に係るガイドライン」

こうした日本語教育について、国が今後どこまで認定制度の対象とし、管理していくのかも気になるところです。

さて、専門学校への転換が現実的なのかを考える前に、一度、留学生側の視点から考えてみます。

これまで留学生には、

① 日本語学校を経由する場合

母国の高校を卒業
→ 日本語学校(入学時点では日本語力が低くても進学可能)
→ 専門学校(卒業後、専攻と仕事の関連性などの条件を満たせば就労系在留資格の取得が可能)
→ 日本で就職

という進路が多くありました。

外国人が日本で働く場合、日本語学校を卒業した時点で、海外での最終学歴が高校卒業のみであれば、「技術・人文知識・国際業務」などで求められる学歴の条件を満たせません。大学卒業程度の学歴がない場合には、一定の実務経験など、別の条件を満たす必要があります。

つまり、「海外の高校卒業+日本語学校卒業」だけでは、「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格で、日本の会社などに就職することはできません。

しかし、最終学歴が高校卒業の場合でも、日本の大学や専門学校へ進学し、専門学校で「専門士」等を取得するなど、必要な条件を満たせば、日本での就職につなげることができます。

一方、海外の大学を卒業していれば、日本の専門学校へ進学しなくても、「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格で求められる学歴の条件を満たせる場合があります。

では、すでに海外の大学を卒業している人が、日本語学校へ留学するのはなぜでしょうか。

学歴の条件を満たしていても、日本語力が十分でなければ、母国から直接、日本企業の採用選考を受けて就職先を見つけることは簡単ではありません。特に、漢字圏ではない国の出身者にとって、日本語学習の中でも漢字の習得は難しいといわれています。

日本語を学ぶ外国人にとって、漢字の学習は難しいのでしょうか

仕事のマニュアルなどが多言語化されていれば助けになりますが、日本で生活し、働くうえでは日常的に漢字を目にすることになります。

漢字の授業でも、学生たちの生の声を聞くと、テキストに使われているフォントによって文字の形が微妙に異なるため、独学ではどの形が正しいのか迷うことがあり、ただテキストを見て真似するだけでは、上手に書くのは難しいそうです。

漢字の形や書き順に、決まりはありますか

そのため、授業で先生に一画一画丁寧に教えてもらうことが大切なのだといいます。

こうした事情もあり、まず日本語学校で日本語力を高め、日本で就職活動を行い、その後、専攻と仕事内容の関連性など、必要な条件を満たしたうえで日本企業へ就職する留学生もいます。

つまり、大卒者にとっての日本語学校は、就職に必要な「学歴」を得るためというより、日本語力を身につけ、日本での就職につなげるための役割が大きいといえます。目的は異なっていても、こうした大卒者の存在も、日本語学校が必要とされている理由の一つです。

そして、実際にこうした留学生たちと接するようになり、私自身の「留学」に対するイメージも大きく変わりました。

大学で日本語教育学を副専攻として学んでいた頃は、どこか「留学=楽しいもの」というイメージを持っていました。しかし、実際に日本語学校で働いてみると、特に東南アジアなどから来日する留学生の中には、趣味や旅行、一時的なバカンスとして日本語を学ぶのではなく、その先にある「日本での就職」を目指して、必死に勉強している学生も多くいます。

つまり、すぐに日本で就職することが難しい留学生にとって、日本語学校は「日本で働くための最初のステップ」の一つでもあります。

まず日本語学校で日本語を学び、その後、それぞれの学歴や目的に応じて大学や専門学校への進学、あるいは日本での就職を目指すのです。

日本人が趣味や教養として海外で外国語を学ぶのとは、勉強に対する危機感や切実さが大きく異なると、現場に立って感じています。

では、留学生側の視点から、学校側の視点へ話を戻します。

日本語学校が認定を受けられず、ビジネス系の専門課程へ転換した場合、本当に学校を存続させることができるのでしょうか。

専門学校に転換しても、そもそも留学生が集まらなければ、学校を存続させることはできません。

一見すると、学費を支払うことができれば、留学生も日本の専門学校へ比較的簡単に進学できるように思えるかもしれません。しかし、実際には、日本人が国内の専門学校へ進学する場合とは事情が異なります。

そもそも、外国人が日本に滞在するためには、滞在の目的に応じた在留資格や手続きがあります。たとえば、観光などを目的とする「短期滞在」は原則90日以内、ワーキングホリデーは原則1年間、「留学」は学校で学ぶための在留資格で、在留期間は個々に指定され、最長4年3か月です。

※在留資格「留学」に関しては、日本語学校や専門学校は2年程度のコースが多いため、日本語学校から専門学校へ進学する場合でも、在留期間を更新しながら学ぶことができます(日本語学校2年+専門学校2年=合計4年程度)。また、母国から直接日本の大学へ進学する場合も、一般的な4年制大学であれば、入学前の準備期間を含め、卒業まで学ぶことができます。

そして、学校で学ぶために「留学」の在留資格を取得したいからといって、誰でも無条件に認められるわけではありません。また、単に日本で長期間暮らしたいという理由だけで取得できるものでもありません。

「留学」の在留資格は、あくまで日本の学校で学ぶことを目的としたものです。そのため、就労を主な目的として「留学」の在留資格を利用するケースや、不法滞在などの不適切な在留を防ぐためにも、一定の条件を満たしたうえで、必要な審査や手続きを経ることになります。

特に、海外から日本語学校を経由せず専門学校へ直接進学する場合、「留学」の在留資格を得るうえでも、専門課程の授業を理解するうえでも、一定の日本語能力が求められます。日本語能力を証明する方法はいくつかありますが、JLPTではN2以上が基準の一つとなっています。

② 日本語学校を経由しない場合

母国の高校を卒業
→ 母国などで日本語を学び、専門課程を学べる日本語力を身につける(JLPT N2以上など)
→ 専門学校(卒業後、専攻と仕事の関連性などの条件を満たせば就労系在留資格の取得が可能)
→ 日本で就職

つまり、日本語学校へ入学する場合と比べ、専門学校へ直接進学できる留学生には、より高い日本語力が求められます。

これがどのくらいのハードルなのか、日本人の英語学習に置き換えて考えてみます。

たとえば英語圏へ留学する場合、語学学校であれば、中学英語程度の英語力からでも学び始めることができ、現地で英語力や文化について学びながら、その先の専門学校などへの進学、最終的には現地での就職を目指すことができます。

一方、語学学校を経由せず、最初から現地の専門学校へ留学生として入学する場合は、中学英語程度では足りません。たとえば、TOEICで990点満点中700点以上取れるくらいの英語力を日本にいる間に身につけ、英語での面接対策や願書・必要書類の準備などを自分で行い、専門学校への入学手続きを進めるようなイメージです。

つまり、語学学校を経由する場合は、現地で英語や文化を学んでから専門学校への進学を目指せます。一方、語学学校を経由しない場合は、専門学校で勉強できるだけの語学力を、渡航前から身につけておく必要があります。

※JLPTとTOEICは試験内容が異なるため、単純に点数を換算することはできません。ここでは、日本人に分かりやすく伝えるためのイメージとして比較しています。

このように考えると、海外から日本の専門学校へ直接進学できる留学生の層は限られ、専門学校にとっても学生募集のハードルは高くなると思います。

さらに、日本の外国人受け入れ政策の先行きに不安を感じる留学生が増えれば、より安心して進学できる学校を選ぼうとする傾向も強まるかもしれません。その結果、限られた留学生が、ブランド力や信頼性があり、教育環境や設備、就職実績なども整った大手の専門学校に集中し、小規模な学校ほど学生の確保が難しくなる可能性もありそうです。

そう考えると、日本語学校が大幅に減少し、国内の日本語学校からの進学者も減っていく状況では、仮にビジネス系の専門課程へ転換できたとしても、それだけで学校の存続につながるとは限りません。

一定以上の日本語力を持つ限られた留学生をめぐって大手の専門学校と競争することになり、学生募集はこれまで以上に厳しくなることも考えられます。

日本語教師の仕事はどう変わる?

結局のところ、専門学校への転換は一つの選択肢にはなっても、必ずしも安定した受け皿になるわけではなさそうです。

そして、ここまで考えてみると、問題は学校の存続だけではありません。

日本語学校が減り、日本で進学するために、来日前から一定以上の日本語力を身につける必要のある留学生が増えれば、日本で学び、その後就職するまでのハードルも高くなります。

その結果、日本への留学や、その先の日本での就職を諦め、別の国を選ぶ人が増える可能性もあるでしょう。

そう考えると、今後は日本へ来てから日本語を学ぶだけでなく、来日前の段階で日本語力を身につけることが、これまで以上に重要になっていくのかもしれません。

そうなれば、国内で留学生を教える仕事が減る一方、海外やオンラインで、来日前の学生に日本語を教える仕事が増えていくのでしょうか。

日本では、活躍できる外国人材を必要とする一方で、留学生の受け入れや日本語教育機関には、これまで以上に厳しい基準を求めていく。そんな方向に進んでいるようにも感じます。

認定制度について考えていると、学校の存続だけでなく、これから日本語教師が「どこに目を向け、どこで、誰に、何を教えるのか」という、仕事そのものの在り方についても考えさせられます。

日本語教師も、これまでと同じ場所で、同じように日本語を教え続けるだけでは、生き残れない時代になっていくのかもしれません。